令和7年度 岐阜県在宅医療推進センター運営事業 第1回在宅医療地域連携強化研修会「地域の特性と在宅医療の今~多職種とともに築く連携と実践~」(2025/12/20開催)
医師研修会令和7年度より、岐阜県における在宅医療の提供体制を充実・強化する目的で、岐阜県医師会に事務局を設置し、在宅医療連携推進の拠点として「岐阜県在宅医療推進センター」を運営しています。2025年12月20日(土)には「地域の特性と在宅医療の今 ~多職種とともに築く連携と実践~」をテーマに「第1回在宅医療地域連携強化研修会」を開催。可児医師会と高山市医師会より、各地域で実践している在宅医療と多職種連携のための取り組みなどについてご紹介いただきました。

会場のようす
開会の挨拶
はじめに岐阜県医師会の伊在井みどり会長から「岐阜県医師会では在宅医療推進センターを設置し、在宅医療を積極的に推進している」「在宅医療は地域ごとに特性が異なり、今後さらに医療人材や医療資源の偏在が大きくなる」「かかりつけ医として、専門でなくてもある程度の知識を持てるよう、ACP(人生会議)をはじめ、死体検案などについてもマニュアルづくりに取り組んでいる」「講演の内容を地域に持ち帰り、今後の課題を話し合うきっかけにしていただきたい」との挨拶で開会しました。

開会の挨拶 伊在井みどり会長
第1部 可児医師会における在宅医療の現状と今後の課題
第1部では「可児医師会における在宅医療の現状と今後の課題」と題して、可児医師会理事の明石克彦先生にご講演いただきました。

可児医師会理事 アカシクリニック院長 明石克彦先生

第1部のようす
可児医師会の概況と取り組み
可児市と御嵩町の医療機関からなる可児医師会には、5つの病院と46のクリニックがあり、医師会員は70名ほどで構成されています。可児市の人口は約10万人、75歳以上の人口は約2万3千人、御嵩町の人口は約1万7千人、75歳以上の人口は約3千人という地域で、可児市の介護認定を受けた高齢者は2023年時点で1万人前後となっています。
在宅医療の現状を知るため、可児医師会の医療機関を対象として在宅医療に関するアンケートを実施したところ、訪問診療を行っていると回答した医療機関は6つと少なく、改めて在宅医療体制を整えるために「可児医師会在宅医療研究会」を立ち上げました。2025年2月には、第1回研究会を開催。訪問診療を行っている5人の医師が集まり、医師同士の横のつながり、連携の必要性などについて話し合いました。
その後、第2回、第3回と研究会を重ねるうちに、一般企業が運営する訪問・往診専門クリニックの台頭という課題が見え、全国的にも拠点を置く訪問・往診専門クリニックの医師を招いて、現状や課題を伺う交流会なども実施しました。
研究会では、各地域や医療機関の現状を把握し、24時間対応、病院と診療所の連携システムの構築、他地域との連携といった様々な問題について検討を進めました。
■第1回可児医師会在宅医療研究会研修
岐阜県医師会で導入を進めているMCS(メディカルケアステーション)をはじめ、可児医師会でも在宅医療におけるICTツールの活用を進めています。現状ではラインワークスを活用して、可児医師会の事務局を中心としたやりとりの他、今後は患者さんとの情報交換ができればと考えています。
2025年11月には、岐阜県医師会が実施する「在宅医療地域連携体制構築助成事業」を活用して「第1回可児医師会在宅医療研究会研修」を実施。「在宅・地域で最期を支える医療~現状と課題~」と題して、中部国際医療センターの杉山陽子先生にご講演いただきました。2026年2月には第2回を開催予定です。
■多職種連携「かけそばネット」
「いつでも“かけ”つけます“そば”にいます」を合言葉に活動する「かけそばネット」では、可児市・御嵩町の在宅医療・介護連携を推進するため、医療の専門職(医師、歯科医師、薬剤師、看護師等)と介護の専門職(ケアマネジャー、地域包括支援センター等)によるプロジェクトチームを立ち上げ。住民向け講演会や専門職の研修会、ワンコイン交流会など様々な取り組みを行っています。
今後の課題について
かけそばネットを通して、自院ではコミュニケーションが取れているが、他院との連携が取れない、多職種連携は取れているが医師間の連携強化につながらないといった問題点があります。また、病診連携の不足、訪問・往診専門クリニックの台頭により、これまで病院に紹介した患者さんの症状が改善すると、かかりつけ医のもとに戻るという暗黙の了解がありましたが、その維持が難しくなっています。
これからは待っているだけでなく、地域のケアマネジャーや病院の医療ソーシャルワーカーとのつながりを深めることが重要だと考えます。可児医師会では「病診連携体制強化のための診療所情報」を病院に提供。「在宅医療支援ネットワーク規約」を作成し、可児医師会会員の相互連携を促進し、ネットワークの強化を進めています。
今後の在宅医療はどこへ向かうのか?在宅医療が花形になることはないかもしれませんが、在宅医療を通して、患者さんとコミュニケーションを取りながら、自宅で最期まで看取ることができ、在宅医療に関わって良かったと感じる医師が増えることを願っています。
第2部 地域医療体制と多職種連携の取り組み
第2部では「地域医療体制と多職種連携の取り組み~へき地医療における在宅医療体制の構築と多職種連携の実践~」と題して、高山市医師会理事の葛谷嘉久先生にご講演いただきました。

高山市医師会理事 西之一色内科クリニック院長 葛谷嘉久先生

第2部のようす
高山市医師会の概況と取り組み
高山市の人口は約8万2千人、65歳以上の高齢者は約2万8千人であり、一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯が増えています。高山市は東京都と同じ広大な面積を持つ中山間地域です。市民が適切な医療を受けられるよう在宅医療マップを提供しています。また、市街地エリアと旧郡部エリアに分かれ、地域により医療提供体制も異なります。開業医は市街地に集中し、旧郡部では7の診療所と3の出張所で対応しています。
こうした状況下で在宅医療体制を整えるため、高山市医師会と高山市が連携して「高山市・白川村在宅医療を考える会」を立ち上げました。医師会、歯科医師会、薬剤師会、赤十字病院、組合病院、地域包括支援センター、訪問看護、行政など多職種が参加する40~50人ほどの構成となっています。
令和6年度の取り組み
2024年9月に第1回高山市・白川村在宅医療を考える会を開催。元気な独居の高齢者が救急搬送され、医療を終え在宅へ、その後、急変したケースについて医師を交えて30分ほどグループで討論し、意見を発表しました。2025年1月に第2回を開催。認知症により受診そのものが困難になるケースや、複数頻回に受診してしまうケースなどについて事例を検討しました。
また、2024年10月には「医療DXの現状と課題」と題して在宅医療研修会を開催。高山市の医療DXの取り組みと、薬局薬剤師のDXの現状について紹介しました。特に、高山市直営でへき地に医療を提供する「高山市の国保診療所」と、2024年12月から実証を開始した「移動診療車(医療MaaS)」についてご紹介します。
■高山市の国保診療所について
高山市の国保診療所は、2005年の市町村合併から高山市の直営となり、7つの診療所と3つの出張診療所でへき地に医療を提供しています。旧郡部の患者さんまで適切に医療を提供するため、「南高山地域医療センター構想」として高山市の南に位置する久々野町・朝日町・高根町にある3つの診療所をグループ化。各職種が地域を行き来し、共同体として地域全体で医療を幅広く展開しています。地域に即してきめ細かく、持続可能な安定した医療の提供を目指しています。
■移動診療車(医療MaaS:Medical Mobility as a Service)について
高山市では、国が支援する「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用して移動診療車を導入しました。朝日町秋神地区における実証運用では、個人宅へ訪問する「個宅訪問型モデル」と、公民館を待合所とした「集合型モデル」を展開。看護師が車両に乗車し、医師は遠隔からオンライン診療を行いました。
個宅訪問型モデルでは、診療所への移動がないため患者満足度は高い、集合型モデルでは、1か所で複数名の診療ができるため効率は良いが、待合所のカギの管理などの手間が増えるといったメリット、デメリットが確認されました。
移動診療車は、広大な高山市の医療を広域的にカバーする手段として大いに期待され、地域のニーズや意向を確認しながら、運行地域を順次拡大する予定です。災害などの緊急時や避難所でも移動診療車を活用したいと考えています。
令和7年度の取り組み
令和7年度は「ケアマネジャーと医療機関との連携~ACPの作成による問題解決」をテーマに、高山市・白川村在宅医療を考える会などを開催。第1回では、岐阜県医師会版エンディングノート「これからノート」についての解説と合わせて、在宅医療を取り巻く課題、ACP(人生会議)のタイミング、在宅での看取りに必要なことなどについて、岐阜県訪問看護ステーション連絡協議会の野崎加世子さんにご講演いただきました。第2回では、ACP(人生会議)を普及させるためにはどうすれば良いか議論し、意見を発表しました。
高山市の死体検案当番について
最後に、高山市医師会の取り組みとして高山市の「死体検案当番」についてご紹介します。在宅の看取り当番とは別に、高山市医師会と高山警察署の共同事業として死体検案当番があり、事件性がないと判断された死体検案を24時間365日体制で診療科を問わず持ち回りで行っています。医師会員数の減少や高齢化により、組織の継続・維持が課題となっており、緊急の場合を除いて深夜帯の呼び出しを行わない、原則、高山警察署で検案を行うなど、医師会員の負担軽減に努めています。
今後の課題について
診療科を問わず、開業医の高齢化や減少が予想され、医師会業務に支障をきたす可能性が高いこと。高山市は東京都と同じ面積の大きな市であり、市街地と旧郡部との医療・介護格差が大きいこと。往診で行き帰りに1時間、2時間かかること。こうした課題に対応するため、旧郡部や過疎地域では、市街地に新しい施設を設置するなど集約する必要があるのではないかと考えています。また、都市部とは異なり、高齢者は徐々に減少していますが、それを担う世代もいません。医療・介護ともに、組織や業務の維持には、人を増やすことが喫緊の課題となっています。
閉会の挨拶
最後に、岐阜県医師会の鳥澤英紀副会長から、参加者の皆さまへの感謝とともに、「地域によって在宅医療の在り方はかなり異なる」「各地域で多職種の皆さんと相談しながら実施することが大切」「医師不足といっても都会では医師が過剰になる」「移動診療車の運用は行政のサポートが重要」「患者さんと築いてきたかかりつけ医との絆を継続するためには病院の地域連携室とのつながりが重要」「次回2/8の研修会では病院の地域連携室の担当者を出演に迎えシンポジウムを開催予定なので、ぜひご参加ください」との挨拶で閉会しました。

閉会の挨拶 鳥澤英紀副会長